代表者からのご挨拶

 慢性の痛みに対して、集学的な慢性疼痛診療と診療連携によるチーム医療の重要性が認識されるようになってまいりました。厚生労働省の慢性疼痛診療体制構築モデル事業が日本全国8地域で立ち上がり、地域の実情に応じた診療システムを構築し、人材養成が始まっています。令和2年度からは、慢性疼痛診療システム普及・人材養成モデル事業と名称が変わり、慢性疼痛診療モデルをさらに各地域に広げていくことが期待されています。私たちは、集学的痛みセンターを各地域に構築し、さらに地域医療機関との連携を深めることで、痛みで苦しむ皆さんのQOLがよくなるよう取り組みを進めております。

 慢性疼痛診療システム普及・人材養成モデル事業―近畿地区―では、慢性疼痛患者の診療に携わる先生方を中心に、医療従事者同士の円滑な診療ネットワークを構築すること、地域医療機関の医療従事者のみならず介護従事者も対象に、痛みの診療やケアに関する治験・知識を広げる「医療者教育セミナー」の開催、慢性疼痛診療に従事する人材育成、の2つを柱として、活動を行ってきました。

 産業界、開業医・理学療法士、心身医学(心療内科・精神科)、集学的治療、頭痛診療、インターベンショナル治療、歯科口腔外科治療、地域医療介護との連携、日本痛み財団とのセミナーに加えて、本年度は、患者会連携を加えた事業において、各領域の核になる先生方に御尽力いただき、長引く痛みで苦しむ患者さんや医療者にとって有用な地域医療機関とのネットワーク、医療者教育体制を構築していきたいと考えています。

 滋賀医科大学医学部附属病院、千里山病院、関西医科大学附属病院、大阪大学附属病院、兵庫医科大学附属病院、富永病院、京都府立医科大学附属病院、大阪南医療センター、奈良県立医科大学などの慢性疼痛診療モデルとなる中心的施設で、集学的痛みセンターを構築していくことと共に、整形外科、麻酔科ペインクリニック、脳神経内科、心療内科、精神神経科、歯科口腔外科、地域のかかりつけ医など、様々な医療機関で働く医療者、さらには介護関係者が連携し、地域全体で一人の患者さんを支えられるような医療介護体制の構築を目指してまいります。医療者1人でできることは少なくても、チームで連携すれば様々なことができていきます。

 慢性疼痛診療の大きな課題として、労働年代の慢性疼痛では、プレゼンテイズム(労働生産性の低下)の改善、復職支援、超高齢化社会において、高齢者の健康寿命延伸に貢献することがあげられます。

 慢性疼痛診療システム普及・人材養成モデル事業が、領域を超えた多職種、多業種の協力のもと、今後の痛み医療構築のベースとなり、よい医療が構築できるよう、ご協力どうぞよろしくお願いいたします。

滋賀医科大学医学部付属病院ペインクリニック科
福井 聖